広報活動

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2018年2月5日

理化学研究所
日本原子力研究開発機構
東京都市大学

軽量化を可能にする鋼材開発に向けた新たな分析手法の確立

-ものづくり現場における小型中性子源の貢献-

RANSの回折測定で得られた複相鋼のオーステナイトとフェライトの回折ピークの図

図 RANSの回折測定で得られた複相鋼のオーステナイトとフェライトの回折ピーク

近年、自動車などの輸送機器では、軽量化による燃費向上が急務となっています。自動車の軽量化には、薄くかつ高強度の「高張力鋼」が適しています。鋼板の熱処理過程で得られる「残留オーステナイト」を含む複相鋼は、高い延性と高強度を同時に実現した高性能の高張力鋼です。オーステナイトは単に多ければいいという訳ではなく、強度・延性などを高次元で両立するためにその割合が重要となります。一方、この残留オーステナイトは、鋼を硬くするために行われる「焼き入れ」が不完全な場合に生成される相でもあり、硬さの低下や、外力や経年による寸法変化などの原因になることがあります。以上の理由から、鋼材の性能・品質を保つためには、オーステナイトの相分率やその変化を正しく測定・制御することが必要となります。

相分率の測定には、鋼材に対して透過性の高い中性子を用いる「中性子回折法」が有効です。しかし、その中性子源は研究用原子炉などの大型実験施設に限られ、小型中性子源ではビーム強度が低く、これまで測定されてきませんでした。

今回、理研を中心とした共同研究グループは、オーステナイトを含む2相からなる複相鋼をサンプルとして、「理研小型加速器中性子源システム(RANS)」を用いて中性子回折測定を行いました。回折計の構築では、遮蔽を効率的に配置してバックグラウンドノイズを低減することで、2相それぞれの回折ピークを識別できるようにしました(図参照)。RANSで測定した複相鋼のオーステナイト相分率は、大型実験施設での測定結果と差1%以内で一致する結果が得られ、小型中性子源の有用性が示されました。

本技術は今後、材料の基礎研究、新材料開発および品質検査のために行われる研究室レベルでの相分率測定に利用されると期待できます。

理化学研究所
光量子工学研究領域 光量子技術基盤開発グループ 中性子ビーム技術開発チーム
特別研究員 池田 義雅 (いけだ よしまさ)
チームリーダー 大竹 淑恵 (おおたけ よしえ)