広報活動

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2018年2月13日

理化学研究所

B細胞を作る最初の分子スイッチを発見

-白血病や免疫不全症の発症メカニズムの解明に期待-

マウス骨髄の前駆細胞における1細胞レベルの遺伝子発現の図

図 マウス骨髄の前駆細胞における1細胞レベルの遺伝子発現

リンパ球と呼ばれるB細胞は抗体を産生する免疫細胞で、感染防御に重要な役割を果たします。B細胞は、他の免疫細胞(T細胞など)と同様に造血幹細胞から作られます。造血幹細胞は骨髄中で徐々に分化能が限定され、最終的にB細胞になる前駆細胞となった後にB細胞へと成熟します。

しかしこれまで、造血幹細胞からB細胞系列への運命決定の分子機構は不明でした。今回、理研を中心とする共同研究グループは、以前開発した造血幹・前駆細胞を無限に増幅する「人工白血球幹細胞(iLS細胞)」用いて、その分子機構の解明に取り組みました。

まず、iLS細胞がB細胞へ分化するときの遺伝子発現の変化を、時系列を追って解析したところ、約4,000個の遺伝子の発現が変動し、約1,100個の転写因子が存在することが分かりました。また、これら転写因子は大きく初期・中期・後期の3段階に分けられ、3段階それぞれに特異的な「転写ネットワーク」を形成していました。さらに、三つの分化段階に相当する細胞を、1細胞レベルで網羅的に遺伝子発現を調べたところ(図参照)、B細胞への運命制御は、3段階で転写因子群が活性化する“分子スイッチ”によって制御されることが明らかになりました。

今後、転写ネットワークを形成している転写因子の白血病や免疫不全症における役割を研究することにより、これらの疾患のメカニズムの解明が進めば、新たな薬剤や治療法の開発につながると期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 融合領域リーダー育成プログラム
上級研究員(研究当時) 伊川 友活 (いかわ ともかつ)
(現 免疫器官形成研究グループ 上級研究員)

統合生命医科学研究センター 免疫器官形成研究グループ
特別研究員 宮井 智浩 (みやい ともひろ)